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はじめに
秋になると、夜明けが遅くなり、そして夕方の日暮れは早くなって1日が短くなるのを感じます。なんだか少しさみしい気もする季節です。
しかしながら、肌寒くなってくると木々は一変して様々な色彩を織りなします。景色のキャンパスに日々絵の具を加えつつ、人々の目に季節の移り変わりを告げるのです。
赤、黄、茶・・・
ふと、「冬だ」と感じさせてくれると同時に、「なぜ葉は色が変わるのだろう」と不思議に思うことはありませんか。
「紅葉のしくみ」を今回の記事にしてみました。
なぜ紅葉するのか?
さっそく結論をお伝えします。
葉の老化にともなって、緑色の「クロロフィルが分解」されます。
そして・・・
-
黄色は「カロチノイド」
もともと葉に存在していた“黄色色素”の「カロチノイドが残るため」に起こる現象
-
赤色は「アントシアニン」
“紅色色素”の「アントシアニンが合成され、蓄積されるため」に起こる現象
詳しく見ていきます。
紅葉は移動する
紅葉前線は、およそ50~60日前後で北は北海道から南の鹿児島まで日本列島を駆け抜けます。1日平均27kmほどで移動します。
また、山地の高度、山の北側と南側、風の通り道、土、湿度によっても紅葉が起こる時期は異なります。
さら細かく見ていると、葉によって、また葉の部位や重なりによっても時期が異なります。
その一瞬でしか見られない景色はこうして作られるのです。
では、どのように色が作られるのでしょう?
紅葉する条件 木の気持ち
紅葉に必要な【大きな条件3つ】
以下の通りです。
- 温度差・・・昼と夜の寒暖差が大きいこと
- 紫外線・・・太陽の紫外線を浴びること
- 湿度・・・適当な湿度があり、葉が乾燥して枯れてしまわないこと
これらの条件下で、以下のような反応が起こります。
勝手に木の気持ち(落葉樹)を簡単にまとめると・・・
寒くなってきたなあ~、それに日も短くなってきたぞ
眠くなってきた・・・
いつもの光も眩しく感じる・・・
さあ、眠る準備をはじめよう!!
(気温の低下、短日を感知→環境ストレス)
(光があるところ)
だけど・・・
ギリギリまで、光を食べておきたいなあ。
いまは寒くなってきたから、食欲も落ちてきたしなあ・・・
食べ過ぎになるから赤色サングラスで葉のクロロフィルを守って、青色だけを食べよう!
(アントシアニン合成→過剰な光エネルギーを阻止→葉緑体の保護→紅葉)
いよいよ寒くなってきたぞ!
凍らないように体に糖分を貯えなくちゃ!!
まずは、葉の栄養を回収しよう!!
(葉緑体中のデンプンを可溶性糖類へ変換→耐凍性の獲得)
・・・そろそろ、光から栄養をつくる時間も短くなってきたし、寒いから栄養をつくるのも疲れてきたなあ・・・
寝る前に葉をしまって・・・
では、おやすみなさい・・・
また来年・・・ZZZ
(アントシアニン分解→クロロフィル分解→カロテノイド分解→葉柄と枝の間に離層形成→葉の脱落)
こんなふうに木は考えているかもしれません。
黄色になるのは、なぜ?
緑色・・・葉緑素に存在する光合成色素「クロロフィル」が分解される。
クロロフィル…光の中で「青と赤の光」を吸収します。このため、使わなかった「緑の光」が散乱・反射することで葉が緑色に見えます。
↓
黄色・・・元から存在していた光合成色素「カロチノイド」が浮き出てくる。
「カロチノイド」
「カロチノイド」は、光エネルギーを吸収しますが、光化学反応は行いません。ただし、「クロロフィル」の補助色素として光を集めたり、強光下での過剰な光エネルギーを熱に変換して防御する働きも持っています。
このように過剰な光エネルギーは、活性酸素種を作り出し細胞に致命的な障害を与えます。
「光が多ければいい」というものではない、ということですね。
赤色になるのは、なぜ?
赤色・・・過剰な光エネルギーからクロロフィルを保護するために「アントシアニンが合成され、蓄積される」ことで赤の波長が反射することで赤色に見えます。
↓
黄色・・・アントシアニンが分解され、元から存在していた光合成色素「カロチノイド」が浮き出てくる
「アントシアニン」
気温低下が主な引き金となって、葉の光合成反応活性が衰えるためクロロフィルで吸収された光化学エネルギーが余ってしまいます。この光化学エネルギーから、活性酵素種は生成され細胞を破壊してしまいます。この過剰な光吸収を防ぐために、紅色色素「アントシアニン」を合成します。こうすることで、可視光の「赤と青色」を吸収している状態から、赤を遮断して青を主に吸収するようにします。
イチョウは黄色ですが、赤になっているのを見たことがありません。これは、アントシアニンが合成される前に落葉してしまう性質があるからです。
アントシアニンのはたらき
このアントシアニンは、新緑のころに弱い若葉を保護するためにも用いられています。葉が展開する前はやわらかく薄いために過剰な光エネルギーから保護するためと考えられます。いずれ、葉がしっかりと大きくなればアントシアニンは酵素によって分解され、よく見る緑色に変わります。
ところで、カエデやブナで普段から赤い葉の品種があります。これは遺伝的欠陥のために、アントシアニンを分解する酵素を作り出すことができないために生じたものです。このため、通常では赤い光も利用したいはずですが、それができないために光合成は非常に効率が悪く、競走下には不利となります。
紅葉あれこれ
紅葉というが、紅葉(こうよう)と黄葉(こうよう)がある
「葉が赤色になる」現象は、紅葉(こうよう)であり、
「葉が黄色になる」現象は、黄葉(こうよう)です。
「こうよう」、同じ読み方ですね・・・
「こうよう」で調べると、多くは「紅葉」で変換されますが、総称して「紅葉」が用いられています。
草の紅葉は・・・
「草もみじ」とも言われます。例えば、ヨウシュヤマゴボウ、アカザ、チガヤなど
異常が生じたときにも紅葉が・・・
枝を通る水や養分が遮断された場合にも、異常があると紅葉が生じることがあります。原因は「虫による穿孔(穴をあける)」、「台風や強風による枝折れ」などです。
緑は光のゴミ・・・
植物にとって可視光のうち緑は使いません。なので、「光のゴミ」なんて表現もされたりすることもあります。それを人間は、目に優しいと新緑や緑を楽しんでいます。実際に、人をリラックスさせる効果もありますので、持ちつ持たれつといった関係でしょうか。
カツラの甘い香り
紅葉時期に甘い香りがどこからともなくすると・・・「あっ!カツラの木が近くにある!」と私は辺りを見回します。カツラのキャラメルが少し焦げたような香りが好きです。この芳香物質は「マルトール」と言われています。紅葉に、香り付き・・・なんとも贅沢な秋を楽しめます。
以上、紅葉についてまとめてみました。
それでは、また👋🐓…
参考文献・図書
ペーター・ヴォールレーベン(2018)「樹木たちの知られざる生活: 森林管理官が聴いた森の声」,ハヤカワ・ノンフィクション文庫p256
佐藤 有恒(2005)紅葉の不思議 科学のアルバムp43
宇梶 徳史、原 登志彦(2007)エコゲノミクス:ゲノムから生態学的現象に迫る Expressed sequence tags(EST)から見た樹木の越冬戦略<https://www.naro.go.jp/training/files/2005_14-04.pdf>