剪定の切り口にぬる薬【癒合剤の使い方】

アイキャッチ 癒合剤

庭木を剪定しました✄・・・

【切り口】このままで大丈夫?

  • なぜ塗るの?
  • 剪定の切り口に【塗る薬】は?
  • 癒合剤の【使い方】は?
  • 【何かで代用】できない?
  • 癒合剤はどこで売ってるの?

今回は、「剪定した切り口に、薬を塗る方法」です。

あなたが、【大切に思っている木を守るための、ひとつ上いく方法】をご紹介。

トップジンMペースト塗布

こんにちは♪

樹木医「コッコ」です!

緑地デザイン、作る、守る仕事を

15年ほどしてます!

🐓

癒合剤が【必要な3つの理由】

ちなみに、癒合剤の読み方は【ゆごうざい】 です。

①腐朽菌の侵入を防ぐ

腐朽侵入

腐朽菌が木の内部に入れば、菌と木のバリアーの戦いとなります。

腐朽菌とは、「木の組織を分解する能力がある菌類」のことです。

樹勢(木の健康状態)次第では負けます。

まずは、切り口を保護して侵入を防ぐ。

そのために癒合剤を塗ります。

②乾燥を防ぐ

③直射日光を防ぐ

傷口を塞ぐのは、切り口周辺の「巻き込み組織」の発達が必要です。

それを促進させるのに、乾燥と直射日光を防ぐことが重要です。

巻き込み

【おすすめ癒合剤3つ】をご紹介

癒合剤として販売されているものに、それほど差はないと思います。

細かくいうと、使い方や用途によって求める性質が異なります。

 

今回は、一般的な庭木につかう【私がよく使う癒合剤3つ】をご紹介します。

※植木の癒合剤として桜はもちろんオリーブや、観葉植物のガジュマルやドラセナ、バラ、ユッカなどの癒合剤としてもおすすめです。

①「トップジンMペースト」

これを選ぶと、ほぼ間違いないです。

殺菌剤が入っている

耐雨性の保護膜ができる

巻き込み組織の形成促進

・「塗り忘れ確認できる」目立つオレンジ色

トップジンMペースト中身

念のため、欠点は2つも書いておきます。

△流動性があり、垂れやすい服につくと面倒

なので、【ヤッケなど】着て作業をするのが良いです。

トップジン垂れ

②「カルスメイト」

手軽に使うなら、コレです。

・乾燥が早い

・のびがよく、垂れにくい

・手に入れやすい

・色が目立たない

③ 「ラックバルサン」

しっかりと長期間保護したい時に使います。

・切り口保護効果が、2年程と長い

・色が樹皮に似て「目立ちにくい」

・保護被膜が「弾性があり強固」

ラックバルサン中味

ラックバルサン

短所も3つ書いておきます。

△高価

△2回塗り必要

△硬化するまでベタベタする

癒合剤の使い方【ポイント3つ】

①剪定・塗布は【晴れの日】に

塗布剤が乾かないので、晴れた日に使用しましょう。

日射し

②切り口は【平滑に】

切り口が毛羽だっていたり、ギザギザしていると「巻き込み組織」が傷口を埋める邪魔になります。

そんなときは、鋭利なナイフか小刀などで切り戻してください。

悪い切り口
※このように毛羽立っているのはダメ!

③3ヵ月~半年の間に、傷口が塞いでいない場合は【上塗り】する

保護膜の効果は、長期間持ちません。

特に、3ヵ月~半年の間に傷口がふさがっていない場合は【上塗りをして新たに保護膜を作っておく】ことが大切です。

癒合剤の使い方【注意点3つ】

①木の元気さを確かめる

「樹勢」と言われる「木の健全性」。

そもそも弱っている木の強剪定は避けるべきです

傷口を塞ぐチカラのない木を切る前に、まずその体力があるかを確かめてからにしてください。

②傷口が早くふさがる「最適な切り口」の大きさは【直径2〜3cm】

切り口の直径が大きくなるほど、巻き込みが弱まる傾向があります。

このため、枝が大きくなる前にこまめに剪定して、大きな枝を切ることがないように抑えておくことが大切です。

③「剪定」と「癒合剤を使う」最適な時期とは

以下のA.Bの理由から、剪定と癒合剤をつかうのに最適な時期は【2〜3月】と考えます。

巻き込み組織

A.傷口が回復する時期

巻き込み組織が活発に形成される時期は【5〜7月】です。

一方、【9〜3月】は、巻き込み組織が不活発のため回復が期待できるのは少なくなります

※②.③-Aは、オオシマザクラを用いた実験でのものです。参考となるかと考え記事に載せます。

B.腐朽菌の胞子が飛んでいるのが【少ない時期】

木の組織を分解する能力がある「腐朽菌の胞子」が少ない時期は【2〜3月】です。

きのこ
※腐朽菌の子実体「きのこ」が発生しているのは、木に腐朽菌が蔓延しているためです。「きのこ」を取っても解決にはなりません。

代用することはできるのか?

身近なもので済ませようとすると以下のものが使われます。

・墨汁

・木工用ボンド

・アルミホイルで覆う

・空き缶でかぶせておく

・塗らずに乾燥

一定の効果が期待できますが、これらで材変色を防ぐことはできません

あくまで、初期の保護効果を高める助けと考えてください。

 

この中で、【木工用ボンド】は材の変色は「トップジンMペースト」に比べて防ぐことはできません。

しかしながら、傷口の一定の保護効果はあります。

そして、長期間の傷口の露出する場合は【殺菌剤の塗布】がより効果を期待できると考えます。

癒合剤は必要か?

また、意外にも【塗らずに乾燥】もある一定の効果があるとする桜の木での実験結果も報告されています。

ただし、カバーできる大きさの切り口か、カバーできる側枝があるのか、カバーできる樹勢があるのか、そして大切なのは「正しい剪定」を行うことが条件です。この辺は経験のある樹木医や庭師が判断するところとなります。

癒合剤はどこで売ってるの?

癒合剤はネット通販、ホームセンターなどで買うこともできます。

では、100均では癒合剤を見つけることができるのでしょうか。

癒合剤はamazon、楽天などの通販で買える?

癒合剤はネット通販で買うのが簡単です。

癒合剤はコメリなどのホームセンターで買える?ダイソー、セリアなどの100均ーなどのホームセンターで買える?

癒合剤はホームセンターの園芸コーナーには置かれていることがあります。

ただし、事前にお店に「木に塗る癒合剤(ゆごうざい)は置いてますか?」と問合せておくと無駄足にはなりません。

それでは、100均ではどうでしょうか。

一時的な癒合剤の代用品となるものは販売されていましたが、癒合剤は見かけることはありません。

代用品として、木工用ボンド墨汁は販売されていますが、あくまで一時的応急処置用と考えて、専用の癒合剤を使うことをおすすめします。

塗っては【ダメな3つ】

・油性ペンキ

・水性ペンキ

・木材防腐剤クレオソート

これらは、「生きている組織を損傷するため修復を大きく妨げる」ので塗ることはオススメできません。

とても重要なのは「正しい剪定」

癒合剤を塗ることは、木を守るためには大切なことは分かりました。

しかし、もっと大切なことは「正しい剪定」です。

別の記事で、皆さんにさらにもう一段踏み込んだ技術をお伝えします。

庭木の剪定【剪定のコツ】①

剪定

【おまけ】樹木医「コッコ」🐓が使うのは…

通常であるならば、「トップジンMペースト」だけで充分です。

また、塗る時に刷毛の代わりに「牛乳パックを切った紙片」を使います。

そのまま捨てることもできますし、刷毛を洗う必要もありませんので、「便利」です。

牛乳パック

ちなみに樹木医である私は、「トップジンMペースト」か「ラックバルサン」をよく使用しています。

使い分けの理由は以下の通りです。

●「トップジンMペースト」

 ・殺菌成分によって接着面を新たにくる腐食菌から保護

「巻き込み組織」(人で言う「かさぶた」)の形成促進

・鮮明な「トップジンMペースト」のオレンジで塗り忘れ防止を確認

●「ラックバルサン」

強固で長持ちする被膜をつくるので塗り直しが困難なとき

・傷口を覆うまでの保護できる時間稼ぎを【確実】にするとき

・樹皮の色「ラックバルサン」で覆って景観に配慮したいとき

つぎの記事も参考にしてみてください。

失敗のない剪定の初歩をご紹介

>庭木の剪定【剪定のコツ】①<

 

剪定の参考本をご紹介

>庭木剪定 【おすすめの本3冊】<

 

カミキリムシ(テッポウムシ)の駆除の仕方をご紹介

\ カミキリムシの“スプレー式薬剤”を使った駆除方法 /

それでは、また‼️🐓

 

参考文献・図書

・ソメイヨシノ(Prunus yedoensis Matsum.)における防菌処理の違いが損傷被覆組織形成に及ぼす影響

内田 均, 島村 拓也, 堀 大才 2008年71巻5号 p.511-514

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jila/71/5/71_5_511/_pdf/-char/ja

・剪定時期と強度がオオシマザクラ(Cerasus speciosa (Koidz.) H. Ohba) の巻き込み組織形成に及ぼす影響 2011 年 37 巻 1 号 p. 15-20 兼村 星志,大藪 崇司,澤田 佳宏,山本 聡,藤原 道郎

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsrt/37/1/37_1_15/_article/-char/ja/

・剪定「コツ」の科学 いつどこで切ったらよいかがわかる 上条祐一郎 (著) 講談社 p78-79

・絵でわかる樹木の育て方 (KS絵でわかるシリーズ)  堀 大才(著) 講談社 p79-84

・最新・樹木医の手引き 日本緑化センター p630

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA